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山で迷わないための方法論③ 「look up と head up」 [やま]

第3回 look up と head up

これまでの記事を読んで、もしかすると「地図読みはできなくてもいいんだ」と思った方もいるかもしれませんが、それは誤解です。リスクを避けるためにも、またいざというときのためにも地図読みはできたほうがいいのです。何より、地図とコンパスが使いこなせると、山ではとっても楽しいですからね。楽しさ倍増といっても過言ではないかもしれないですよ。

しかし、やはり地図読みを勉強される方はまだまだ少数だと思います。そこで、地図が読めなくても迷わないで済む方法を考えてみようというのがこの連載の趣旨ですので、誤解しないでくださいね。決して地図読みを軽視しているわけではありません。

この連載では、次のような方をイメージして書いています。

①地図読みを勉強しているのだけど、できるようになった実感がわかない。1:50000の地図が読めなくて困っている。
②地図は読めないけれど、迷いたくはない。

①の方は、第1回と第2回の記事を読んでみてください。この第3回では、主に②の方を対象に書いてみることにします。

さて、ここから本題に入ります。

そもそも、私たちはどうして山で迷ってしまうんでしょう? 
地図がわかりにくいから? それとも道が整備されていないため? あるいは標識がきちんと立っていないから? 前の人についていったら迷ってしまった?

理由はさまざまだと思いますが、地図がわかりにくい(あるいは地図読みができない)から、という理由は、ここでは除外しましょう。登山地図はディフェンシブに読めばいい、というお話を第1回、第2回でしてきましたので、もはや地図のせいにはしないことにします。

ところでいま例に挙げたいくつかの理由は、すべて外部的な要因です。すべての登山道や標識が完璧に目立つように整備されていたらよいのかもしれませんが、なかなかそうはいきません。ですから、それを前提に迷わない方法を考えてみましょう。つまり、私たち自身のほうに何か原因がないかを探ってみたいと思います。

さて、look upということばを聞いたことがあるでしょうか。これはサッカーでよく使われる用語です。ひとことでいえば「目を上げる」ということになります。ドリブルをするとき、最初のうちはもちろんボールを見ながらやるのですが、慣れてくると足元のボールを見ずに、顔を上げて前を向きながらドリブルができるようになります。この状態です。

顔を上げていれば周りにいる敵・味方の動きがわかりますから、次の動作に移るときに時間がかかりません。味方に動きに合わせて瞬時にパスが出せるでしょうし、逆に敵がボールを奪いに来てもすぐに対応することができます。

では、次です。head up ということばがあります。look up に似ていますが、こちらはトライアスロンで使われることばです。トライアスロンでは海で泳ぎます。海は広いですから、進行方向をときどき確認しないと、波の影響などもありまっすぐ泳げません。そんなとき、きちんと進行方向に向かって泳いでいるかどうかを確認するための手段が、head up swimです。息継ぎは左右どちらか(あるいは両方)で行いますが、ヘッドアップスイムは進行方向を確認するためのものなので、頭を前に上げて進行方向を確認します。

さて、ここまでの話でだいたいおわかりだと思いますが、もうひとつ挙げておきましょう。マラソンでも同じです。オリンピックや世界選手権などのエリートランナーはみんな前を見据えて走ってますね。足元だけをみて走っているエリートランナーは少なくとも私は見たことがありません。

というわけで、サッカー、トライアスロン、マラソン、この3つに共通するのが、競技中に前を向く、顔を上げるということなのです。こじつけじゃないですよ。

では登山中のみなさんはいかがでしょうか。前を見て歩いていますか? きつい登りが続くとき、ときどき顔を上げて登山道を確認しているでしょうか?

私の経験によると、きつい登りではまず足元しか見られません。顔を上げたり、前を向いて歩くというのは、とても身体がきついのです。これは簡単なようで、意識していないと絶対できないのではないかと私は考えています。

次に、どれくらいの頻度で見るかということですが、足元を確認していくことも大切ですので、足元と前方を交互に見ていくことになります。トライアスロンのヘッドアップスイムはだいたい3、4回息継ぎをするうちの1回くらいの割合で行うのではないかと思いますので、同じくらいかなと自分では思っています。

前を向いて、視線の先に登山道が見えたらOK です。このとき、視界に入ったところまでは迷わないことが確実になります。ここが重要です。これはクライミングでいう「確保」、と同じではないかと思います。つまり、クライミングで少しずつ「確保」しながら登っていくように、登山でも(カラビナは使いませんが)視線を上げて、少しずつ道を「確保」していくのです。

いかがでしょう。わかっていただけましたか? 登山道でわかりにくいところには○や×印が付けられていたりしますが、そういった情報も顔を上げれば視界に入ってきますし、先行するグループが迷って引き返している様子が見えるかもしれません。

前を向いて、「現地」の情報をどれだけ入手できるかが、迷わなくて済むための大きなポイントになります。地図の情報ではなく、「現地」の情報ですので、気をつけてください。とにかく現地に注意を払いましょう。

実はこれを実際にするにはけっこう体力がいるのですが、これができたら、迷わずに済む人はたくさんいるのではないかと思います。look upとhead up。呪文のように唱えながら、次の山行でやってみてください。

さて、次は1回休みますが、まだまだこの連載は続きます!
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