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山で迷わないための方法論① 「地図読みの前に」 [やま]

先日、北八ヶ岳を歩いてきて、ちょっと感じたことがあったので、そのあたりを踏まえて山で道に迷わないためのポイントについて何回かに分けて書いてみようと思います。といっても、このテーマに関してはたくさん本が出ていますので専門的なことはそちらを見ていただくことにして、これから書くのは、自分の経験に基づいたちょっとしたコツです。

私と地図とのつきあいはオリエンテーリングを始めてからなので、かれこれもう20年弱。自分なりの考え方も含めて、そのあたりを書いてみます。

第1回「地図読みの前に」

いま図書館で読んできたヤマケイ11月号の特集も「地図読み」でした。ヤマケイ・カルチャークラブをはじめとして、地図読みはブームといってよいでしょう。さまざまなところで講習会が行われていて、とてもよいことだと思います。

さて、登山でふつう使われる地図の縮尺は、昭文社の『山と高原地図』シリーズでは
1:50000(拡大図は1:25000、周辺図は1:350000)です。また、国土地理院の地図は1:25000または1:50000ですね。登山で使われるのは1:25000が多いでしょう。

ところで、この縮尺についてはあまり気にしない方がほとんどだと思います。オリエンテーリングをやっている人以外で関心のある方はあまりいないのではないかと思いますが、しかしこれがとても重要なのです。

具体的に説明しましょう。まず、グーグルマップを開いてください。どこでもよいのですが、とりあえず自分の住所を開いて、最大限拡大(ズームイン)してみてください。このときの縮尺を見ると、スケールは20m(下段は50フィート)となっています。このスケールの長さ(上段の20mの方)を定規で測ると2cmなので、このときの縮尺は1:1000となります。

では、今度はスケールをズームアウトしていきます。マイナスボタンを1回押すと、スケールが50m(下段は100フィート)に切り替わります。この状態が1:2000の縮尺です。さらに2回ズームアウトすると、スケールは200m(下段は500フィート)になります。この状態が約1:8000です。そしてもう1回ズームアウトすると(上段は200mのまま、下段が1000フィートになる)、約1:15000の縮尺になります。オリエンテーリングではいろんな縮尺の地図が使われますが、少し前までよく使われていたのがこの1:15000の縮尺の地図です(最近では1:10000が多く使われています)。
そこからさらに1回ズームアウトすると、1:31250、次が1:62500となります。

長くなりましたが、グーグルマップの縮尺についてまとめると、ズームアウトするごとにこんな感じになります(1:8000より下は概算値です)。

1:1000
1:2000
1:4000
1:8000
1:15384
1:31250
1:62500

さて、もういちどグーグルマップで自分の家を見てみましょう。1:1000のスケールを用いたときと、1:62500のスケールを用いた時、どちらがよく見えますか?もちろん1:1000を使った方がよく見えるに決まっています。では、1:62500のスケールを用いた時、自分の家や周囲はどのように見えるでしょうか?

1:62500のスケールを用いた地図は、自分の家どころか周囲の細い道もつぶれて見えなくなってしまっているのではないでしょうか。そうなのです。主要な道路しか見えないですし、1:1000の時には道の曲がり具合や建物の建つ角度までわかりましたが、縮尺が変わるにつれてそれらはわからなくなってしまいます。

何がいいたいかというと、私たちが普段「地図読み」に使用している登山地図というのは1:50000の縮尺ですから、いま説明した1:62500の縮尺に限りなく近いということです。

「なんだ。じゃあ地図読みなんて無理だ」と思われた方。大正解です。そうです。1:50000の地図では正確な地図読みは無理なのです。これは地図読みをする際の大前提として知っていてもらわなければなりません。

本格的に地図が読めるようになりたい、という方はぜひ、オリエンテーリングの地図を使って、実際にオリエンテーリングをやってみてください。オリエンテーリングの地図は1:10000が多いので、登山地図とは比較にならないほど正確です。正確な地図で等高線が読めるようになると、1:50000の地図でも応用が利くようになりますし、オリエンテーリングがうまくなるころにはコンパスの使い方もマスターしていることでしょう。

しかし、オリエンテーリングは楽しいのですが、みんながオリエンテーリングをはじめられるわけではありませんし、やらない人のほうが多いでしょう。ですからとくにオリエンテーリングをおすすめするわけではありません。

登山地図は地図読みには向かないことはわかった。じゃあどうすればいいか。
実は登山地図は正確な地図読みには向かないけれど、有効活用はできるのです。弱点を逆手に取った登山地図ならではの活用法について、次回お話しします。第3回以降は、地図読みに頼らず、かつ山で迷わないための簡単な方法をいくつか紹介していきます。
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