SSブログ

国籍法違憲判決 [中大通教]

仕事のわずかな合い間に国籍法違憲判決を読んでみました。いまさら・・・といわないで。だって条文が改正されたし、調べるのがめんどうだし、と思って読んでいなかったのでした。

しかし最高裁の原文を読んでみると、意外とシンプルな話でした。条文を調べるのもすぐできた。

簡単にいうと、結婚していない日本人の父と外国人の母から生まれた子で、生まれる前(胎児のとき)に父から認知を受けていない子が、日本国籍を取得できるかどうかが争われた事件です。

改正前の国籍法3条1項は、子が胎児のときに父から認知を受けていれば国籍を取得できるけど、出生後に認知を受けた場合は(父母が婚姻して届け出をしないかぎり)取得できないとするものでした。

大法廷の多数意見は、この規定は憲法14条1項に違反するとしています。その理由中に、「父母の婚姻という、子にはどうすることもできない父母の身分行為」によって国籍取得が左右されるのはようするにおかしいからということが書かれています。

この引用した部分ですが、この部分は非嫡出子の相続分をめぐる訴訟でもそのまま使えそうです。だから現時点では非嫡出子の相続分差別は14条1項違反で違憲という結論が最高裁の多数意見といってよいのではないかと思いました。

まあ反対意見もいろいろあって興味深いですが、読んでみるといろんなひとがいるんだなあと思いますね。私は多数意見の結論が無難だと思いますけど。

ここから先は原文を読まないとちょっとわかりにくいかもしれないですけど、厳格に司法の役割を果たせばよい、立法府の権限をおかしてはいけない、という意見がでてきますが、お役所仕事だなあと私は思います。訴訟をしてまで困っている人がいるわけなんですよね。生身の人間の苦労が少しでもわかるひとに判事をやってもらいたいと希望します。

ところで、ちょっとおもしろいのが泉裁判官の補足意見。多数意見を受験生チックに表現してくれています。というか、これは学生に向けて解説したのだろうと個人的には思います。

14条の違憲審査に関しては、法の目的が
①必要不可欠、②重要、③正当、のどれかであり、
その手段が
①必要最小限度、②目的との間に実質的関連性があるか、③目的との間に合理的関連性があるか
というふうに審査基準ごとに分類するのが学説上、あるいは受験生の通説上は一般的です。

が、この大法廷の多数意見はこんな分類を使っていません。まず、立法目的については、
「立法目的には合理的な根拠が認められる」
といっています。必要不可欠とも重要とも正当ともいっていません。これらのことばを避けて、ちがうことばにしています。

次に、手段については、「手段」ということばは1度だけしか使っていなくて、しかもちょっとちがうところで使っています(詳細は原文を読んでください)。

前から思ってたんですけど、重要と正当、あるいは実質的関連性と合理的関連性って、だれがどうやって区別するんでしょうねえ。こんなものが基準になるのかなと思っていたのですが、とにかくそういうことばは使わないという意思表示なのかなと理解しました。

だけど、そうするとおそらくわからない学生が出てくると思い、学生チックなことばでていねいに解説してくれているのが泉裁判官の補足意見です。読んでみてください。

あ、ただし、多数意見も目的と手段との間の「実質的関連性」ということばは使っています。しかし、「目的と手段との間の」というような表現はあえて使っていません。

よく考えてるなあと思わせられます。

nice!(0) 

nice! 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。